『今は未来を信じて日々を過ごそう』

　(全日本高等学校オーケストラ連盟理事長　幸重 雅也)

　全国の高校・中学のオーケストラ部・弦楽部の生徒の皆さん、こんにちは。私は全日本高等学校オーケストラ連盟の理事長を務めております、幸重雅也（ゆきしげ まさや）と申します。

　私がこれを読み上げている、これを収録している4月下旬の今、ほとんどの皆さんはおそらく自宅で不安な日々を送っていらっしゃるのではないかと思います。新型コロナウィルスの感染拡大防止のため学校が休校となり、また政府や自治体の要請で外出もほぼ禁じられて、友達に会う事もできず、自宅学習をしながら自分の部屋で寂しい日々を送っているのではないかと思います。

　そして外出や登校できない事ももちろんですが、オーケストラを愛する皆さんは何よりも部活動ができないことがつらいですね。つい数ヶ月前まで、各自の部活動で、演奏会の実現をめざして一生懸命練習していた「あなた」がいたはずです。先輩や後輩、友人たちと楽しく部活動で会話していた「あなた」がいたはずです。時には真面目に音楽の素晴らしさや部活のあり方などを友人と議論した「あなた」がいたはずです。

　そうした当たり前の日々が誰にもあったはずで、その時はそう感じなかったかもしれませんが、今となってはかけがえのない大事な日々だったと思います。そんな大事な部活動や音楽ができなくなった現在、この悲しみを誰にぶつければいいのでしょう。悔しい、悲しい、寂しい、みんなに会いたい。皆そう思ってじっと自分の部屋で耐えていることと思います。

　でも、色んなことを悔しがってみても、あなたの人生は良くならないし、部活動がすぐに再開されるわけではありません。部活動が再開される日を待ちながら、その日のために今できることをやってみましょう。

　まだ新年度の部活動の出発が始まってないのであれば、まずはLINEで部活の仲間たちと相談して、新入生勧誘の方法を考えてみましょう。いざ練習が始まった時にパートの中で短時間に効果的な練習ができるかもしれませんね。そういったものをネットで探してみるということも大事なことです。

　部活が今年やる曲は決まっていますか？決まってなければ自分から提案できるように、様々なオーケストラ曲をYouTubeで何回も見たり、楽譜はIMSLPというサイトがありますね、ご存知だと思いますが、IMSLPのサイトで楽譜をじっくり見て研究したりしてみてください。こうした1人で自宅で出来ることは様々あります。

　そして個人練習もしなければいけません。演奏は練習あっての賜物です。楽器の音を家で出せない人もいると思います。あるいは慌ただしいことで、楽器を学校に置いてきてしまった、あるいは楽器を家に持って帰れないという人もいると思います。それはそれでしょうがありません。そんな場合でも嘆く必要はありません。音が出せないのであれば、出せないなりの練習方法があるはずです。自分で出来ることを探し、工夫してみましょう。

　楽器の音が出せる家庭であれば、ビデオ通話でお互いの演奏を聴いて感想を言い合ったりできます。これ楽しそうですね。アプリを使えば友人と音を重ねてアンサンブルも作れます。これも楽しそうです。音楽は1人でやっているよりも、人と分かち合うことで、その喜びが倍増します。どうぞ臆病にならずにどしどしやってみてください。

　今から100年余り前、全世界で「スペイン風邪」と呼ばれる伝染病がありました。実態は今回と同じ、全く未知のウイルスによる重い風邪でした。世界中で何百万人という方が亡くなりました。日本でも推計で20万から50万人ほどが亡くなったといわれています。そういう恐ろしい伝染病でした。この流行は1年で終りませんでした。いったん収まったと思ったら、翌年にもまた現れ、最終的には第3波まで来たそうです。その時も今と同じで、慎重な人は家を出ないで助かり、軽率に出歩いた人は病気にかかって亡くなったそうです。この例からみても、やはり伝染病に対するには、家でじっとしているしかないんですね。

　今回の新型コロナウイルスも非常に似ていると思います。スペイン風邪と同じように多くの犠牲者を出しつつありますが、ただありがたいことに、人類が経験した全ての伝染病は必ず収まっています。歴史上、収まらなかった伝染病はありません。

　さあ、収まった。何ヶ月か何年後か分かりませんが、収まったらいよいよ部活動の再開です。また友達と楽しく合奏しましょう。演奏会を目指して、切磋琢磨、お互いを磨き上げましょう。その明るい未来は必ずやってきます。「必ず」です。

　私たち高校オーケストラ連盟も皆さんの活動の再開を心からお待ちしております。その再開がいつになるのかは私もわかりませんが、状況を注視しながら様々なイベントを準備しつつ、色々と開催に向けて今模索しておるところです。感染拡大の状態や政府の方針などで実際はそれが実施できないこともありますけれども、その情報についてはSNSや公式サイトなどで逐次お知らせしていきます。

　ですから、今から最初から諦めているのではなくて、あくまでも皆さんの気持ちを尊重して、「やりたい」という方向でおります。それはお約束いたします。私たち大人のできることは、真面目な紳士な皆さんの思いをできるだけ実現していくことだと私は考えています。ぜひ皆さんもそれを信じていただき、ご自身の活動に前向きに取り組んでください。ぜひ、お願いします。

　どうか感染だけは絶対にしないように注意し、毎日お元気にお過ごしください。また皆さんと音楽の場でお会いできることを、本当に楽しみにしております。

顧問・指導者の皆様へ

　いつもお世話になりありがとうございます。つらい状況が続いておりますね。今いったん途絶えた活動を再び起こし上げて軌道に乗せるのは非常に大変な、並々ならぬ努力が必要だとお察しいたします。もし再開の際、お困りのことがあれば、私ども連盟の事務局に遠慮なくお寄せください。できるだけのご助力をさせて頂きたいと思っております。

　そして先生方も無理だけはなさらずに、ご自愛くださいませ。先生方が倒れれば、活動も再開できなくなってしまうかもしれません。ぜひぜひご自愛下さいまして、今後の活動の発展を、しっかりとやって頂ければと願っております。先生方の皆様にも、またお会いできるのを楽しみにしております。よろしくお願い致します。